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入った瞬間、不思議だからタイトルは不思議空間。
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微かに聞こえる
だけど、何の音なのかわからない。
ただ、わかるのはこちらを誘うような音…
気にしなければわからないような音量。
だが、耳元で囁かれるように聞こえる。
甘く切なく…誘うように。
形を持たない音とわかっているのに…
手で散らすように振り払う。
当然、手は空を掻くだけだ。
何故…
わからない。
頼むからほっといてくれないか…
俺はここで目を閉じたいんだ。
なにも見たくない聞きたくない。
この場に横たわっていたいんだ。
そう願っているのに…音は止まない。

「美鶴」
微かに聞こえていた音。
誘うように甘く切ない音。
その音の正体は…俺を呼ぶ声。
目を開けた俺の視線の先には嬉しそうに微笑む亘がいた。
「おかえり…美鶴」
手放そうとした感覚全てを俺に押し入れるように力いっぱい抱きしめられる。
亘の感触、声、笑顔全てを確認した瞬間、意識がはっきりする。
「俺は…」
今まで眠っていたような感覚。
いや、でも…ここはベッドではなく学校だ。
先程まで確か…職員室にいたような気が…
そう…転入に必要な書類を提出して、帰る途中だった。
その記憶があるのに鮮明な記憶は幻界の記憶。
俺は幻界で冥王となり、ハルネラになったはず。
千年の時を過ごす運命だったのに…
何故…?俺は現世…亘の傍に…いるんだ?
疑問を投げかけるが返ってくる答えはない。
「美鶴…?」
黙ったままの俺に亘まで心配そうな顔で俺を見る。
「亘」
縋るような瞳の亘にくしゃっと髪を撫でた。
途端に亘の顔がぱぁ~っと笑顔になっていく。
きっと尻尾があったら目一杯ぱたたっ☆と振っている事だろう。
「また美鶴に会えてよかったっ!!」
ぎゅぅっと更に俺に抱きついてくる亘。
すんすんっと鼻を鳴らしながら泣きながら俺の胸に顔を埋める。
ふいにどこからともなく声が聞こえた。
始めは聞き取れなかったが…次第に聞き取れるようになってきた。
その声は幾人もの声で誰とは判別できない。
だが、はっきりとわかる幻界での言葉。
『ヴェスナ・エスタ・ホリシア』
そう…亘が最期にくれた祈りの言葉。
その言葉が俺を包み、最後に聞こえてきたのは亘の声。
はっきりと強く祈る声が俺を包んだ。
その時、投げかけた疑問に答えが返ってきた。
ヴェスナ・エスタ・ホリシア。
再びあいまみえる時まで。
亘が最後に俺にかけた祈り。
その祈りが俺を現世に…亘の元へと戻らせてくれたのか。
全く…本当にお人好し。
「お前、幻界も救った上に俺まで救うなんて…呆れて涙が出るよ…」
ぎゅっと亘を抱き返し肩口に顔を押し付ける。
「ひどっ!美鶴に会えてこんなに感動しているのに呆れるってどういうことっ!?」
怒った声を上げ、俺の腕の中でばたばた暴れる。
俺はぎゅうっと更に抱きしめると耳元で囁く。
「ヴェスナ・エスタ・ホリシア。…亘、お前にまた再会できて嬉しいよ」
暴れていた亘はぴたっと行動を止める。
「夢じゃないよね?これからずっと一緒にいられるんだよね?サッカーしたりゲームしたり…ずっと…ずっと一緒だよね?もう、消えたりしないよね?」
懇願するような問い掛けに切なくて愛しい気持ちがこみ上げる。
俺は顔を上げて力強く頷く。
すると、亘はポロポロと泣きながら笑う。
「美鶴、お帰りっ!!」
「ああ、ただいま…」
ぎゅっと抱き合いながら再会を祝う。

おまけ
「お兄ちゃん…」
ちょっと離れたところから声をかけられる。
「ア、アヤ…」
亘との再会の感動ですっかり周りのことがすっ飛んでいた事に気付く。
朝礼ギリギリの時間で人がほぼいなかったことが唯一の救いだが…
妹が傍にいたことを忘れていた。
(亘の友人のことも忘れていたが…それはどうでもいい)
「お兄ちゃんっ!お友達泣かしちゃダメでしょっ!!」
「あ、これは…」
いや、泣かしたくて泣かしたわけじゃないんだが…
「ア、アヤちゃん、泣かされたんじゃないんだよ」
亘もはっと我に返ったのか妹に懸命に否定してくれる。
「本当?」
「本当、本当っ!本人が言ってるんだからっ!」
妹はじぃっと俺の顔を見て判断しようとする。
俺も本当だと証明するように頷く。
そこでようやく納得してくれたのか怒った顔を引っ込めてくれた。
「お兄ちゃんっ次にお友達を泣かせたら絶交だかんねっ」
勝手に小指を絡ませると指きりげんまんをさせられた。
そして、そのまま手を繋ぐと校門へ向かい歩き出す。
「こ、こらっ!アヤっ急がせるなっ」
「じゃぁ、ばいばぁ~いっ!」
アヤはそんな俺を無視し、くるっと振り返ると亘に手を振る。
「あ、ばいばい~…なんかアヤちゃんがミーナに見えてきた」
反射的に手を振り返しながら亘がぼやく。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「転校してすぐお友達出来ていいなぁ~」
「アヤもすぐできるよ」
「うんっ!私もお兄ちゃんとあのお友達みたいにすっごいラブラブで仲良しなお友達作る~」
「…ラブラブって(汗)」
アヤの言動にどう返していいものか悩みながら家路へ向かう。
とりあえず…俺と亘の現世の旅は今、始まった

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ラブラブって…♪
うふふ~。
326更新、きっとしてくれると思って楽しみにしてましたわよ!
胡都音さんとこのミツワタは原点っていうか、小学生ラブがすごく好きです。
これなんだよ描きたいものは…。

というか、PCダイジョブですか!?
5月の新刊いけそう!?(そこが心配!)
楽しみにしてますから、な、何とかしてね…?
かえで URL 2010/03/27(Sat)02:04:30 編集
あはぁ~
こんばんはぁ~
326更新がこんなんになってしまいまして・・・
もっとラブラブにしろという美鶴の抗議かなと(苦笑)
えへへ~楓さんの好みに沿ってたようでこれ幸いですっvv
ショタ好き~らしいのでこのころの2人が大好きなんですよぉ~
でも、書くより読みたい派です(おいっ!)

パソコンはダメダメであきらめました。
現在、購入方向で市場調査中。
うふふふ・・・データもバックアップとってないのであきらめです。
5月の新刊も危ういかもですぅ(>_<)
ペーパーのSSのみってことも(汗)
えへっvv何とかならなかったらごめんね~♪
(現在、親のパソでパコパコ打ってます)
最悪、このパソコンで書く予定ではありますが。
それでは、コメントありがとうございました。
管理人 2010/03/29(Mon)23:57:16 編集
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紅茶・創作活動・読書
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自分の中の不思議ちゃんを暴露してます。
見ての通り、痛い人です(笑)。
時たまポエマー、基本腐った女。
黒猫と紅茶(セイロン)を愛してます。
ちなみにプロフィール画像の猫は相棒『トト』。
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